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至高の一品:Brooks B17 Special

サドルは体と自転車の接点であり、数あるパーツの中でも重要度が高いとされている。サドルの良し悪しで自転車が楽しくもなるし、つまらなくもなる。痛みがひどい時は拷問にさえなる。なので、自分のお尻に合ったサドルを見つけるのが長距離を楽しく乗るための秘訣なのだが、これがなかなかに難しい。おしりの形状というのは人それぞれ。ポジションや荷重ポイントも違う。
実際買うとなると本当に難しい。テストサドルを貸し出して貰えるお店が近くにある人はラッキーだ。大抵の人は似た症状を抱える人のインプレなどを参考に「今度こそはお願いしますッ!」と思いながらポチっとするのである。初回でスイートサドルに巡りあえる人は稀で、多くの人は失敗し、そこからサドルマラソンがスタートするのである。

ないのなら、作ってしまおうスイートサドル


考え方を変えてみよう。そもそもサドルにお尻を合わせようとするからいけないのであって、サドルが自分のお尻に合わせてくれればいいんじゃね?Brooksのレザーサドルはこういうことである。
革というのは変形する。使っていくうちに、おしりの形状に合わせてあたりというか、馴染みが出てくる。ただ一週間やそこらで馴染むかというと、人生そんなに甘くない。これは乗る頻度や体重やオイルケア、それからbrooksのモデルによっても異なってくる。正直な話をすると馴染むまでは硬い。自分の場合、初期の頃はお尻が割れそうになったくらいだから。その辺はレーパンでなんとかお茶を濁した。でもこなれてきてレーパンなし100kmライド走れた時は正直驚いた。ここまで変わる物なのかと。それくらいのポテンシャルを秘めたサドルであり、これがbrooksがサドル沼の最後の砦と言われる所以でもあるのだ。

ちなみに、馴染むまでの期間を心配している人もいると思う。しかし、これが意外に楽しい。乗る度に「馴染んできたかな」とニヤニヤしながら無意味にグニュグニュしてみたり、「柔らかくなあれはぁと」とおまじないを掛けながらオイルを塗ったり、仕事中雨が降ると「むぎちゃん(サドルの名前)が危ない」とカバーを掛けにいったり(レザーは水に弱い)。植物を育てるのが好きとか、シムシティが好きな人なら案外ハマるかもしれない。

槌の音に耳を澄ませる


B17 Specialは名前の通り、通常モデルとは違うスペシャルな仕様になっている。 その一つが銅の大鋲である。しかも手打ちである。世界に2人しかいない鋲打ち職人によって叩かれ、息を吹き込まれたこの銅リベット。くすみ、汚れ、打痕跡すべてが味わい深く見えてくる。目を閉じて鋲をスリスリすると、「カンッ、カンッ」というリベットが打ち込まれるハンマーの残響音が聞こえるくらいに質感は高く、所有欲を満たしてくれる素晴らしい出来栄えだ。通常モデルとの価格差は6000円。高いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、この子を一個作るあいだに通常モデルが25個作られるというから、このSpecialに限っては単純に価格で比較するのはナンセンスかもしれない。当店でもこの銅鋲目当てでSpecial仕様を買ってかれる人はけっこう多い。 ちなみに、銅鋲以外にも以下の違いがある。

  • 銅メッキレール
  • サドル側面にカット加工が施されている
  • サドルカバーが付属
所有欲を満たしてくれる一品であることは間違いない。

自分へ最高級のご褒美を


B17 Specialの値段は21,600円。今、この値段を見て「高い」と思った人に是非とも知っておいてほしいことがある。それは途方も無く長く使うことができる、ということだ。10年はザラで、中には30年選手というのも実際あったりする。 その秘密は、厳しい検査によってサドルに使用できる最高のレザーのみをチョイスしているということ、そして補修パーツが用意されていて「修理可能」という点だ。

少なくとも10年使えることを踏まえると、個人的には安くはないが高いとも思わない。普段頑張っている自分へのご褒美であれば、全然払っても良い金額だと思うのだが、みなさんはどう思われるだろうか?